現在では減ってきましたが、長らく、
法隆寺にはギリシャ建築の影響があるといわれてきました。
ギリシャ神殿と同じように法隆寺の柱も単なる円柱ではなく、
中央から下3分の1にかけて膨らみが生じているからです。
nonbirinonko、nsmaibunによるPixabayからの画像
今では、この話は教科書からもなくなりましたが、
いまだにそう信じている人がいます。
こういった柱のふくらみをエンタシスといいますが、
ヨーロッパでは早くから、木造建築、あるいは樹木の模倣としての
デザインではないかとも言われていました。
そのなかで、視覚的なデザインも取り入れ、
今のような理解になったのではないかと考えられています。
そもそも、エンタシスに関して体系的にまとめた、
ウィトルウィウスという人物はイタリア、ローマの人であり、
ギリシャの人ではないんです。
さらにいえば、パルテノン神殿が作られてから400年近くたった後に、
記述しているのです。
今でいえば、江戸時代初期の建物の設計思想を現代の設計士が、
語っているのです。
単純に比較はできませんが、元の設計思想を反映しているかは、
定かではないんです。
ただ、そこが建築の面白さでもあります。
最近になって、さまざまな資料が発見されつつありますが、
それでもわからないところは、合理的で一番矛盾のない仮説を
積み重ねていくしかありません。
それぞれの時代の社会的背景と人間の想像力によって、
築かれているのです。
案外、建築には関係のない人の発想が、
研究を飛躍させていく可能性も決して小さくありません。
皆さんも観光に行った際、パンフレットに書かれている内容について、
ホントか?と思ってみてみると、
思いもよらない体験ができるかもしれません。
Comments